「新築」という呪縛とリノベーション

日本には従来、「新築信仰」という言葉が定着し、中古住宅の流通の
活性化が阻まれてきた。しかし最近、注文住宅の価格が暴騰し
「新築住宅」が売れなくなった。公表データによると、
大手ハウスメーカーの1棟あたりの平均単価は、
①三井ホーム 4,799万円、②旭化成ホームズ 4,680万円
③積水ハウス 4,620万円、④大和ハウス 4,510万円
⑤住友林業 4,150万円 である。
この価格は建物の価格のみで、家具やカーテン、外構などの付帯工事は
含まれていない。それらを加算すると庶民には手が届かなくなってしまった。
日本経済は物価は上がるが実質賃金はダウンというスタグフレーション。
住宅取得がいかに高嶺の花になったかが一目瞭然だ。

思い起こせば、2020年のコロナ禍で世界中の経済が低迷し、2021年の
米国発のウッドショックで輸入材の価格が高騰。さらに、2022年2月の
ロシアのウクライナ侵攻により原油価格が上昇し、諸物価や電気代も
大幅アップ。これらが新築価格の高騰につながった。

新設住宅着工戸数の実績の推移と予測

2023年の持ち家の年間・着工戸数は22万戸。住宅業界の全盛期であった
50年前の1973年は76万戸の実績だから、76%もダウンしたことになる。
2024年には持ち家の着工は15万戸と予想されている。こんな状況が続けば、
工務店は大半が淘汰されてしまう。しかし、住宅は846万戸も余っている上に、
超高齢化時代のあおりをうけて相続されても住まない家が増え続け、空き家
問題は深刻だ。空き家の流通や老朽建物のリノベーション、それに用途変更
による有効活用のニーズは一気呵成に急増するだろう。
そんな希望的観測の元、「新築信仰」という呪縛から解かれて、リノベーション
事業を充実させ、地元・広島から「リノベな家・景」をブランド化したい。