弱者が強者に勝つ
「給料はいりませんから、野球の指導をさせて
ください」と校長に1通の手紙を書いた人がいる。
今夏の甲子園で準優勝した下関国際高校の
坂原秀尚監督(45歳)だ。彼は広島で実績のない
野球人生を送った後、東亜大学(下関)で教員免許
を取得し、17年前に野球部の監督に就任した。
当時はグランドには雑草が繁茂し、道具は散乱し、
部員も数えるほどで、不祥事で監督も不在という
最悪の状態だったという。
そんな中、「その日のうちに出来ることは徹底的に
やらせる」というスパルタ指導で退部する部員が続出。
部員1人になって廃部が頭に浮かんだという。しかし
「弱者が強者に勝つ」をモットーに、「甲子園出場が
目標」と言い続け、周囲に失笑されたものの、
公式戦で1勝するのに3年半もかかったという。
監督の情熱が無名校を強豪校に変えたドキュメント
は、昭和のヒューマニズムが漂うスポ根ドラマ
「スクール・ウォーズ」とダブってくる。苦労人と
いう言葉だけでは片付けられないものがある。
奇しくも、異色の経歴とやり方で頂点を競った
仙台育英の須江監督と下関国際の坂原監督。
新たに令和の高校野球の扉を開けたといっても
過言ではない。高校野球が面白くなりそうだ。