広島の港玄関である宇品地区が様変わりしている。
ふと旧広島港湾事務所が気になり足を運んだ。
この建物は欧州ルネッサンス様式を日本的に
導入した公共建築物のひとつで広島市内に唯一
残る明治時代の木造洋館だ。
玄関上の屋根部分の切妻破風が面白い。
西洋風の柱頭の刻み仕事も見事だ。設計者は不明らしい。
完全に欧米の建物を見まねで造ったものだ。
それでも当時の大工さんの知恵が随所に見られる。
シンメトリックの下見板張りの外観は今では
白ペンキがはげ落ち、すっかり古びている。
100年前に建築され広島港の潮風に耐えながら
広島の文明開化の空気をひっそり伝承する建物は
やがて解体されることだろう。名残り惜しい限りである。